YouTube広告の費用の決め方と注意ポイント
YouTube広告の公式サイトによると、YouTubeに広告を掲載する中小企業の数は過去2年間で倍増しているといいます。ユーザーが動画広告に関心を示した場合のみ費用が発生する仕組みなので、少額からでも取り入れやすく広告費用を有効に活用することが可能です。今回は、YouTube広告の費用と注意すべきポイントをまとめました。
Youtube広告の運用方法はこちら
【運用初心者向け】YouTube広告のターゲティング方法と運用ポイントを解説
1.YouTube広告は1視聴10円以下から始められる
YouTube広告のプランは以下の4つのメニューから選ぶことができます。配信する期間や方法、予算の上限などをコントロールしながら出稿する「運用型広告」という仕組みで、広告主自身が配信する場合には数千円からでも配信が可能です。ただし、広告代理店を通じて出稿する場合は「最低出稿金額」が設定されているため事前に確認しておきましょう。
(1)スキップ可能なインストリーム広告
YouTube動画の再生前、再生中、再生後に再生されます。秒数の制限をかけずにユーザーの興味・関心に訴えることができます。ユーザーは5秒経過後に広告をスキップできるようになるので、冒頭にインパクトを持たせると途中離脱の低下につながります。
(2)スキップ不可のインストリーム広告
上記のインストリーム広告同様、動画の再生前後や途中に流れます。15秒以内という秒数制限はありますが、ユーザーは最後まで広告をスキップできないため、メッセージ全体を伝えたい場合に適しています。
(3)TrueViewディスカバリー広告
YouTubeの検索結果の一部や関連動画の横など、ユーザーが情報を探している場面で表示されるので、潜在意識にアプローチすることができます。動画はユーザーが広告をクリックしてから再生されます。
(4)バンパー広告
6秒以内の短い動画広告です。視聴単価も比較的安価なので、インパクトのあるメッセージで幅広いユーザーにメッセージを発信したいときに適しています。
2.メニューの選び方
既に動画素材があるときやこれから作る段階といった動画広告の準備の状況と、広告の配信目的に合わせて選択するのがおすすめです。
(1)既存の動画素材を活用するケース
・既存の6秒動画を使い回したい⇒ 1.(4)バンパー広告
・既存の15秒以内の動画を使い回したい⇒1.(1)スキップ不可のインストリーム広告
・既存の15秒以上の動画を使い回したい⇒1.(2)スキップ可能なインストリーム広告
・既存の動画の長さは問わず、視聴単価が30~50円まで高くなっても狙ったターゲットからのアクションを得たい⇒1.(3)TrueViewディスカバリー広告
(2)YouTube広告用に動画を制作するケース
・とにかく視聴回数を最大化したい⇒1.(4)バンパー広告
・視聴回数の最大化を図り、動画が6~15秒以内に収まる⇒1.(2)スキップ不可のインストリーム広告
・視聴回数の最大化を図りたいが、動画が15秒以内に収まらない⇒1.(1)スキップ可能なインストリーム広告
・ターゲットに対して認知やアクションを得たい⇒1.(3)TrueViewディスカバリー広告
3.YouTube広告を配信する際の準備事項
YouTube広告は、Google広告の動画キャンペーン機能を使用して配信準備を行います。以下のプロセスを経て動画広告の効果の最大化を図ります。
(1)広告配信の目標を決める
動画広告によって達成したい目標を設定します。下記の項目などから選べます。
・見込み客の獲得
・ウェブサイトのトラフィック
・商品やブランドの比較検討
・ブランド認知度とリーチ
(2)ターゲットを決める
キャンペーンのターゲット条件を設定し、動画広告と関連性の深いYouTubeユーザーを絞り込みます。下記はその一例です。
・ユーザーの属性グループ(年齢/性別/子供の有無など)
・詳しいユーザー属性(入学・卒業など教育の段階/住宅所有者/子供の年齢など)
・ユーザーの興味・関心(該当するカテゴリの動画を検索/視聴しているユーザー)
・動画リマーケティング(YouTubeの操作履歴に基づくユーザー)
(3)動画素材を用意する
YouTube広告用に動画を用意します。新しく制作しても、既存の動画を活用しても構いません。
(4)入稿&審査を行う
YouTube広告の入稿にはルールがあります。希望する配信先に適した動画サイズやフォーマットを確認しましょう。また、動画広告は掲載に適しているかどうかの審査が設けられています。審査は基本的にYouTubeの自動システムによって判断されますが、審査がクリアできず結果を不服に思う場合は、1回限りですが人による審査を申請することもできます。
(5)配信を開始、運用結果を見ながら調整
YouTube広告は運用型広告です。時間ごとの配信状況や視聴率といったタイムリーな運用結果を観察し、いつでも入札額や広告素材を変更し調整することができます。
(6)配信終了、配信結果の分析&次回の改善点洗い出し
動画広告の配信結果を分析し、次回の動画広告配信につなげます。
4.YouTube広告の運用にあたっての注意ポイント
YouTube広告の運用は、運用前の予算設定や運用中の費用の消費スピードの確認など、いくつかの注意点があります。
(1)予算の決め方
予算のタイプは、「日別」と「キャンペーンの合計」の2パターンがあります。基本的には実施期間中の総費用を表す「キャンペーンの合計」を選ぶのがおすすめです。
ただし、下記のような場合は「日別」を選ぶと良いでしょう。
・配信期間中に、一時的に予算の強弱をつける場合
・配信終了日が決まっていない場合や、あえて停止日を決めずに配信する場合
(2)運用中の入札調整
動画広告では、基本的にCPMを設定します。CPMとは「インプレッション単価」のことで、動画広告を1,000回表示するごとの金額を入札する方法です。CPMを1,000円で入札した場合は、1回表示するごとに1円を支払うことになります。
広告の運用中は、あらかじめ決めておいた1日の予算金額を何時の段階で使い切っているかをしっかり観察して、その後の入札の調整を行いましょう。例えば、夜になってもその日の予算を使い切っていない場合は入札金額を引き上げます。一方、昼時点でその日の予算を使い切ってしまう場合は入札金額を引き下げるなどで入札を調整します。
入札以外にも、ターゲティングや内容で予算の消化ペースを調整するという方法ありますが、まずは少額の入札からはじめて最適な予算をコントロールしていくのがおすすめです。
(3)クリエイティブの変更
一度作った動画自体を変更するのは容易ではないかもしれませんが、テキスト原稿の変更だけでもクリック率や視聴率などの結果に大きな動きがあらわれます。
上記画像の場合、青いボタン状の「もっと見る(全角5文字以内)」と黒い太文字の「てすとてすとてすと(全角7文字以内)」部分は、文字数制限以内であれば自由に設定できます。
(4)ターゲティングの変更
最初に設定したターゲティングで目標値の到達が難しい場合は、ターゲティングの見直しが必要です。ターゲットの条件は詳細に設定するほど関心の高いユーザー層へのリーチが期待できますが、その反面対象を絞りすぎている場合があるからです。
①配信ペースに関して
ターゲティングの変更により配信ペースを調整することもできます。例えば、1日の早い時間帯にその日の予算を使い切ってしまう場合はターゲティングを絞り込むことが必要です。また、予算よりも配信ペースが遅れていると感じる場合は、ターゲティングを広げることで調整が可能です。
②目標達成に関して
ターゲティングのパターンを複数用意して目標達成の度合いを測るマーケティング手法のひとつに「A/Bテスト」があります。このターゲティングごとに視聴率がどれくらいあるかによって、動画広告の顧客からの反応を探ります。
Aパターンの視聴率が想定よりも低い場合は、他に用意しておいたBパターンのターゲティングに変更して再度配信します。また、複数のターゲティングを同時に配信し、視聴率が低い方のターゲティングの配信を停止して目標達成を目指すこともできます。
5.弊社事例紹介
ここまでは、YouTube広告の種類や配信時の準備事項、広告運用時の注意点を見てきました。
続いては、弊社が実施している広告運用の事例を紹介します。失敗事例及び成功事例をそれぞれ取り上げ、詳しく解説します。
解説する内容については、以下の4項目です。
①取扱商材について
②広告の実施期間
③使用した広告メニュー(媒体)
④今回の広告出稿の際のポイント/広告の効果と検証結果
では、まず失敗事例から解説します。
<失敗事例>
①取扱商材について
7,000名以上の学生数を誇る某大学を商材として取り扱いました。
こちらの大学では、毎年オープンキャンパスを開催しています。
本事例では、このオープンキャンパスへの参加者を集めるためのPRとして、YouTube広告を運用しました。
②広告の実施期間
2022年3月から広告運用を開始しました。
オープンキャンパスのタイミングに合わせた短期的なものではなく、それ以外の季節も継続して運用しています。
③使用した広告メニュー(媒体)
YouTube広告(インストリーム広告)を媒体として使用しました。
④今回の広告出稿の際のポイント
YouTube広告を使用し、「サイト誘導 」+「視聴獲得」という2つの目的でインストリーム広告を実施しました。
広告運用開始後、CTR(クリック率:広告が表示された回数のうち、どのくらいクリックされたかを示す割合のこと)は2%と低い数字となっていました。
したがってCPC(クリック単価:Web上に表示されている広告を1回クリックした時に発生する費用のこと)についても1,000円前後と、他の媒体と比べると高い数字が導き出されてしまっていたのです。
後日、配信形式を切り替えることにしました。
従来のインストリーム広告から動画アクションキャンペーンへの変更です。
その結果、CPCは300円程度に改善することができました。
ちなみに動画アクションキャンペーンとは、コストを抑えつつCV(コンバージョン=Webサイトで獲得できる商品申込みや問い合わせといった成果のこと)獲得に特化した動画を配信できる広告のことです。
YouTube広告のスキップ可能なインストリーム広告とTrueViewディスカバリー広告の形式を用いての配信が可能です。
YouTube及びYouTube以外の様々な場所に自動的に広告を掲載できるのが特徴となっています。
続いて、成功事例を解説します。
<成功事例>
①取扱商材について
情報サービスを始め、コンピューター・コピーなどを含めたシステム機器販売や導入支援、教育、保守までをカバーする国内大手のOA機器の専門商社が提供する商品・サービスを商材として取り扱いました。
この商社では、時代の流れに合わせ、デジタルトランスフォーメーションを進める方針を打ち出しています。
今回、その方針に沿った販売促進及びリブランディングを目的として、広告を運用しました。
②広告の実施期間
2021年7月から広告運用を開始し、現在に至るまで約1年実施を継続しています。
③使用した広告メニュー(媒体)
YouTube広告(インストリーム広告)を媒体として使用しました。
④広告の効果と検証結果
30秒のCMを作成し、YouTube広告として運用し始めました。
運用開始後は、CM30秒時点での視聴率が10%前後と決して高い数字とは言えませんでした。
またテレビCMなどを手掛けている会社でもあるため、先方は視聴率の低さを気にかけている様子でした。
視聴率の改善を図るため、次の方策を実施しました。
それが、ブラックリストの作成です。
具体的には、不要なチャンネルを見つけ出し、除外するということです。
広告運用開始後は、ゲーム関連やエンタメ系など数多くのYouTubeチャンネルにおいて広告を運用していました。
しかし、その中でプロ野球系やエンタメ系、ゲーム関連のチャンネルを省くことにしたのです。
除外したチャンネル数は、約200〜300でした。
この方策により、CMを見たいと思うユーザーにしっかり届くYouTube広告となりました。
その結果、視聴率の大幅な改善にも至ったのです。
以前と比較すると約2倍となり、当初の視聴率10%前後から20%前後までの引き上げに成功しました。
まとめ
動画広告にチャレンジしたい企業にとって、少額から始められるYouTube広告はおすすめです。
ユーザーの反応をタイムリーに観察しながらきめ細かく改善することもできるので、常により良い成果を目指すことも可能です。
今や若い年齢層だけでなく幅広いユーザーにリーチできるYouTube広告を、企業のビジネス戦略に取り入れてみてはいかがでしょうか。
参考サイト
動画広告フォーマットの概要
https://support.google.com/google-ads/answer/2375464?hl=ja
動画キャンペーンの作成
https://support.google.com/google-ads/answer/2375497
入札単価と予算の設定
https://support.google.com/google-ads/answer/2375454