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媒体の利用者層でターゲティングすることは正しいのか

広告運用でターゲティングを行う際、多くの人が「どの媒体をターゲット層がよく使っているか」に頼ってしまいがちです。しかし、表面的なデモグラフィック情報だけで媒体を選ぶことが最適とは限りません。ターゲットがその媒体でどのような気持ちでコンテンツを消費しているのか、潜在的なニーズに目を向けることで、効果を最大化できる可能性が広がります。本記事では、年齢や性別にとらわれない新しい媒体選定の考え方を具体例とともにご紹介します。

広告における媒体選定の考え方

広告運用において、ターゲティングを行う際には「どの媒体がターゲットに多く使われているか」という視点が基本的な出発点になることが多いです。例えば、「令和4年度情報通信メディアの利用状況に関する調査報告書」(総務省情報通信政策研究所、2023年6月発行)によると、インスタグラムに関する利用状況は「20代女性が多い」というデータがあり、20代女性をターゲットにする場合にはInstagramを選択することがよくあります。この方法は、予算が十分にありリーチ目的であれば効果的かもしれません。しかし、広告費が限られている場合、表面的なデモグラフィック情報に基づいて媒体を選定することが本当に最適解なのか、疑問視する余地があるのではないでしょうか。

出典:「令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書 <概要>」、総務省情報通信政策研究所、2023年6月

限られた予算の中で効果を最大化するためには、ターゲットがどのような「目的」や「気持ち」でその媒体を利用しているのか、より深い分析が求められます。つまり、単に年齢や性別などの属性で媒体を絞るのではなく、ターゲットがどのような状況でその媒体を活用し、どんな気持ちでコンテンツを消費しているのかといった「心理的な動機」や「利用シーン」を考慮することが鍵となります。

具体例:40代以上をターゲットにした広告とTikTokでの成功

実際のケースを見てみましょう。あるサプリメント広告で、40代以上の健康意識が高い層をターゲットに設定し、まずはFacebookとスマートニュースを選んで出稿しました。これらの媒体は年齢層的にもターゲットとマッチしているように思われましたが、実際のCPA(顧客獲得単価)は予想よりも高く、コンバージョン数も目標を下回ってしまいました。

そこで、発想を変えてLINEやX(旧Twitter)、さらにはTikTokといった一見ターゲット層とは距離がありそうな媒体にも広告出稿を広げたところ、意外にもTikTokで最も高いコンバージョンレートとCPAの成果が得られたのです。この結果は、TikTokが若者向けメディアとして認識される一方で、「若々しくありたい」「流行についていきたい」という40代以上のユーザーの潜在意識と、TikTokの若々しいコンテンツが共鳴したためと考えられます。若年層が多いとされるTikTokでも、実際には40代以上のユーザーが増加しており、彼らが持つ「若さへの憧れ」や「好奇心」を刺激したことがコンバージョンに繋がったのです。

このように、ターゲット層の表面的な属性だけでなく、彼らが感じる潜在的なニーズや願望、使用するメディアで期待する体験が広告の反応に影響を与えることがわかります。TikTokは若者向けメディアという常識にとらわれず、自社製品の訴求ポイントと媒体の潜在的な雰囲気を重視したことで、最適なターゲティングが実現できたケースです。

潜在的な心理と媒体の選定

広告媒体を選ぶ際、デモグラフィック情報に依存するのではなく、自社製品のメッセージやターゲットの心理と、媒体自体が持つ雰囲気や利用シーンが一致するかどうかを考えることが重要です。ターゲット層の持つ潜在的なニーズや感情と、媒体が提供する「場」の性質が合致すれば、より効果的な広告配信が可能になります。

「このメディアは若年層が多いから」といった固定観念にとらわれず、自社製品とターゲット層の深層心理がどうリンクするのかを考えることで、媒体の選定が広告効果を最大化する手助けとなります。ターゲティングは単なる属性情報に頼らず、ターゲットが持つ本質的な思いや動機を掘り下げることで、より精度の高い広告運用を目指すべきです。この考え方は、今後ますます進化が求められるデジタル広告において、差別化の鍵になるでしょう。