保険商品の獲得競争が激しくなる一方で、「効率」だけを追う運用には限界も見え始めています。SBI日本少額短期保険様も、検索広告中心の運用が一巡し、“予算を増やすほどCPAが悪化する”局面に直面していました。今回は、コンペ前の課題から、制作体制の刷新・インフルエンサータイアップ・Salesforce連携を経て成果が伸びた背景、そして次の展望までを伺います。
広告を出すほど悪化する効率 が
現場に「手詰まり感」を生んでいた
松山:まずは、堀之内様の現在の業務範囲と、日辰広告とのお取り組みが始まる前の状況について詳しくお聞かせください。
堀之内様:私は現在、主にWeb広告の運用をメインで担当しています。もともとはチームメンバーが担当していた領域でしたが、私が育休から復帰したタイミングでWeb周りの業務を引き継ぐことになりました。
日辰広告さんとお会いする前の状況を振り返ると、一言で言えば「非常に強い頭打ち感」がありました。当時は別の代理店さんに運用をお願いしていたのですが、検索広告(Google/Yahoo!)を中心とした施策が一巡してしまい、文字通り「出し切った」ような状態だったんです。
松山:「出し切った」というのは、具体的にどのような状態だったのでしょうか。
堀之内様:当時は、広告予算を増やしてもコンバージョンが思うように増えず、逆に獲得単価(CPA)だけが上がっていくという状況でした。会社としても「成果に繋がらないものにこれ以上お金は出せない」という判断になり、予算を縮小せざるを得ない。でも、予算を減らせば当然認知も獲得もさらに減っていく……という、負のスパイラルに陥っていたんです。
加えて、当時は検索広告以外の新しい媒体へのチャレンジに対しても、組織全体として非常に消極的でした。Meta(Facebook/Instagram)や、当時出始めたばかりのP-MAX、動画広告といった施策も、「やり方が分からない」「効果が出ないのでは」という不安から、二の足を踏んでいるような状況だったんです。
松山:クリエイティブの面でも課題を感じていらっしゃったとか。
堀之内様:そうですね。当時は「バナーを頻繁に差し替える(刷新する)」という概念自体がほとんどありませんでした。一度作ったバナーをずっと使い続けるのが当たり前で、クリエイティブを検証して改善していくという土壌がまだ育っていなかったのも、手詰まり感の一因だったと思います。
「数字」の先にある「ブランド」を見据え
日辰広告を選んだ理由
松山:そのような閉塞感を打破するためにコンペを実施されたのだと思います。大手の代理店も選択肢にある中で、弊社を選定いただいたのは、どのような理由からだったのでしょうか。
堀之内様:正直に申し上げれば、最初は不安もありました。コンペに参加された他社さんと比べても、日辰広告さんは規模が小さめだったことや、初めての運用会社の変更が成果につなげられるかどうか不安に感じておりました。
しかし、それでも選定させていただいた最大の理由は、日辰広告さんが「目の前の数字」だけではなく、私たちの「ブランディング」を真剣に考えて提案してくれた点にあります。
松山:「ブランディング」という視点が、当時のSBI日本少額短期保険様には必要だったのですね。
堀之内様:はい。他社さんの提案が「いかに効率よくCPAを下げるか」という戦術的な話に終始する中で、日辰広告さんは「SBI日本少額短期保険というブランドを、中長期的にどう育てていくか」という一段高い視座からのビジョンを示してくれました。もちろん、グループ内からの紹介という安心感もありましたが、最終的には「この人たちとなら、単なる広告運用を超えたパートナーシップが築ける」という期待が決め手になりました。
現場を救った「制作費のプール制」 が
クリエイティブ改善の速度を変えた
松山:お取り組み開始後、初期は順調でしたが、途中でMeta広告などの新しい施策で苦戦し、以前のような「効果が出ないならやめましょう」という空気に戻りかけた時期もありましたね。
堀之内様:ええ、あの時期は日辰広告さんにもご苦労をおかけしました。会社としては、結果が出ない施策に対して「これ、やっている意味あるんですか?」という厳しい視線が注がれるのは当然のことです。私たち現場としても、認知施策の重要性は理解しつつも、周囲を納得させるだけの材料を揃えるのに苦心していました。
松山:その停滞期を乗り越える大きな鍵となったのが、「制作体制の抜本的な見直し」でした。広告は配信設計だけでなく、改善が回る仕組みまで整って初めて成果が再現できる。当時は、まさにそこがボトルネックになっていると感じていました。
堀之内様:それが本当に大きかったです。以前は、バナーを1枚作るたびに都度見積もりを取り、社内で稟議を通す必要がありました。これが現場にとっては大きなストレスで、「このバナーを作って効果が出なかったらどうしよう」という心理的ブレーキがかかり、結果としてクリエイティブの改善が後回しになっていたんです。
松山:しかも、稟議に時間がかかる分、差し替えるまでの間に状況がさらに悪化してしまうこともある。さらに「1本◯円で作ったのに、数日で止めたら無駄になる」という感覚が働いて、本来は止めるべき広告を「引き伸ばして配信してしまう」ような、本末転倒も起きやすかったと思います。そこで私たちは、都度見積もりの負担そのものを無くして、現場が「費用の判断」ではなく「改善の判断」に集中できる状態を作りたいと考えました。日辰広告から提案したのが「制作費の定額化(プール制)」です。
堀之内様:はい。これにより、現場の私は「予算の範囲内で、どれだけクリエイティブを改善できるか」だけに集中できるようになりました。
別商材では、現在でも都度見積もり・稟議の工程が必要で苦労する場合もあるため、こちらの体制のありがたさを痛感しています。
「この訴求がダメだったから、次はこれを試そう」と、費用を気にせず、スピード感を持ってバナーを気軽にリフレッシュできる。この刷新の文化が定着したことが、広告のパフォーマンスを底上げする強力な基盤になりました。
社内の厚い壁を越えて 実現した
インフルエンサータイアップの「爆発」
松山: クリエイティブの改善が進む中で、次の打ち手として「みんなのバイク保険」の認知拡大を目的に、インフルエンサータイアップに踏み切りました。今回の施策は、話題化そのものが目的ではなく、「広告として成果を出す」ことから逆算して設計した取り組みでした。一方で、実行までの社内調整はかなり大変だったと伺っています。
堀之内様: おっしゃる通りです(苦笑)。最大の壁は、「保険の募集行為」に関する法的な懸念でした。インフルエンサーの方が動画内で商品の説明をすることが、法律上の「募集」に当たってしまうのではないか。もしそうなら募集人資格が必要になるのではないか。そうした議論が社内の法務・コンプライアンス部門でも起きて、一時は実施自体が危ぶまれるほどでした。
松山: そこで日辰広告としては、あくまで「広告としての体験」に落とし込みつつ、成果にもつながる形にするために、表現の整理から入りましたよね。
堀之内様: はい。どこまでなら広告表現として成立するのか、どの言い回しなら誤解を生まないのか。かなりギリギリまで表現を調整しながら、社内の関係部署とも何度も擦り合わせました。日辰広告さんにも台本づくりや表現チェックで伴走していただき、ようやく形にできた、という感覚です。
松山: 実施にあたっては、YouTuber3名と並行でタイアップを進めつつ、動画を“単発で終わらせない”設計にしました。導線やクリエイティブ設計に加えて、二次利用の想定まで含めて「広告として勝ち筋が出る形」を最初から組み立てていました。
堀之内様: 結果として、狙い通り成果が出たのが大きかったですね。公開直後から管理画面のコンバージョンが目に見えて伸びて、社内でもインパクトがありました。これまでの事実ベースの訴求とは違い、第三者の視点で語られることで、ユーザーの行動を強く後押しできたのだと思います。
松山: さらに、事前に二次利用の許諾を取っていたので、YouTube広告でも配信し、初速だけで終わらず、継続的に成果を積み上げられた。ここは今回、特にこだわったポイントでした。
堀之内様: ええ。加えて副次的な効果として、YouTubeのオーガニック検索でも関連キーワードで上位に表示されるようになり、広告費をかけていない場所からも安定した流入が生まれる形になりました。調整に時間はかかりましたが、成果が出たことで社内でも「認知施策に投資する意味」がより腹落ちして、次の展開を前向きに進められるようになりました。まさに、苦労した甲斐があった施策だったと思います。
管理画面の数値だけに頼らない
Salesforce連携が生んだ「揺るぎない信頼」
松山: もう一つ、お取り組みの中で重要だったのが、管理画面上の数値だけで判断せず、実際の成約(実売上)に近いデータを軸に運用することでした。私たちは「広告を回すこと」ではなく、最終的に事業の成果につながる投資判断を一緒にしたいと思っていて。そのために、Salesforceの数値を毎週共有いただく形を提案しました。
堀之内様: 以前は、広告の管理画面上でどれだけ「効率が良い」とされていても、社内の成約数と乖離があることが悩みの種でした。特にMeta広告などはその傾向が顕著で、「本当に売上につながっているのか?」という不信感が社内に残りやすかったんです。
松山: まさにそこが、私たちが提案した理由です。管理画面のCPAだけで会話が進むと、成果の見え方がズレた瞬間に「やめましょう」に戻ってしまう。
だからこそ、議論の土台を本当のゴール(成約)に揃える必要があると考えました。毎週の共有は確かに手間が増えますが、それ以上に、誤解や空回りを減らして「正しい判断」を積み上げられる。結果的に、遠回りをしないための仕組みだと思っています。
堀之内様: 実際、そこが一番助かっています。Salesforceの数字が毎週前提として共有されることで、社内でも説明がしやすくなりましたし、何より「広告が実利につながっているか」を同じ目線で見られるようになりました。
松山: 毎週の報告では、Salesforceの数値を軸に獲得状況をご報告しながら、次週以降の予算配分も調整しています。完全にパラメーターを保持できないなど制約はありますが、だからこそ推測ではなく、実データに近い材料で運用の意思決定をすることを大切にしています。
堀之内様: はい。その「実利に直結した運用」のおかげで、私たちと日辰広告さんの間で認識のズレがほとんどなくなり、「成果が出ている施策に正しく投資できている」という確信を持てるようになりました。
日辰広告さんは、単にバナーを作って広告を回すだけでなく、私たちの事業全体の数字を追いかけ、寄り添ってくれる。その姿勢があるからこそ、予算の増減といった判断も安心してお任せできています。
広告運用を超えて 事業の味方へ
次に見据える「LINE・ブランド・SNS」
松山:ありがとうございます。最後に、今後の展望と日辰広告への期待についてお聞かせください。
堀之内様:今後は、現在進めているLINE公式アカウントの活用をさらに深めていきたいと考えています。お客様との継続的な接点を作り、そこから自然に認知や成約へ繋げていく。これには商材への深い理解が必要ですが、日辰広告さんならツールの会社さん以上に私たちのことを分かってくれているので、心強いパートナーです。
また、「SBI日本少額短期保険」という社名自体のブランド認知も高めていきたいです。今はまだSBIグループのロゴに頼っている部分もありますが、将来的には「みんなのバイク保険」といった商品名を聞いたときに、真っ先に私たちの社名を思い出していただけるような状態を目指しています。
松山:SNSアカウントの運用なども、今後視野に入ってくるかもしれませんね。
堀之内様:そうですね。Instagramなどのアカウント運用も、今はまだ手つかずで機会損失を感じている部分ですので、タイアップの反応を見ながら、よりライトにお客様と繋がれる場所として育てていければと思っています。
日辰広告さんは、広告に関係ない領域でも、弊社の事業成長に繋がることなら何でも相談に乗ってくれます。私たちのような、リソースも知識も限られた現場の担当者にとって、これほど心強い存在はありません。
松山:私たちは、お客様と共に歩み寄って答えを見つけていく「二人三脚」のスタンスを大切にしています。
堀之内様:まさにその通りだと思います。自分たちの会社をどれだけ知ろうとしてくれるか、そしてどれだけ寄り添ってくれるか。日辰広告さんとの関係は、まさにそのような理想的な「パートナー」の形だと思っています。これからも、弊社の事業を一緒に伸ばしていく戦友として、末永いお付き合いをお願いしたいです。
PROFILE

Web広告運用を中心に、獲得施策と認知施策の両立に取り組む。Salesforceなどの成約データも踏まえながら、投資判断の精度向上と中長期でのブランド形成を推進。

デジタルマーケティング支援を担当。検索広告・Meta広告・動画施策の設計/運用に加え、クリエイティブ制作体制の構築や計測・CRM連携など、事業成長に近い領域まで伴走する。

