N Journalのインタビュー第1回目となる今回は、インタビュワーとして株式会社セレンコーポレーション代表取締役社長の笹平謙介さんをお招きし、これまでの日辰広告の歩みと、これからの展望について日辰広告代表の海老名がお話しました。同じく会社経営をする笹平さんならではの視点や、今までに様々なプロジェクトをご一緒し日辰広告を一番近くで見ていただいた経験から、1歩踏み込んだご質問をいただき、日辰広告がお客様へ届ける価値とは何かについて熱く語り合いました。
ワープロで記事広告を書いていた
父の背中を追って広告の世界へ
笹平:まずは会社の起源からお伺いさせてください。日辰広告は海老名さんのお父様の会社がスタートだと伺っていますが、ご自身が会社を経営しようと考えるようになったきっかけは何だったのでしょうか?
海老名:当時は広告代理店に勤めていて、大きな不満もなくそのまま働いていくのかなと考えていた一方で、いつか会社をやりたいという気持ちもどこかでありました。そんな時に母が亡くなり、「人はいつ死ぬかわからないのでやるなら今だな」と決意しました。せっかくならば今までの経験を活かしたマーケティングの領域でと考えて、名義だけ残っていた父の会社を使ってスタートしました。
笹平:大きく決意されるきっかけがあったのですね。海老名さんのキャリアのスタートはロイター通信で、最終的には総合広告代理店から独立されたと思うのですが、お父様の業種はなんとなく意識されていたのでしょうか。
海老名:自然と意識していたと思います。父は新聞広告を扱っていたので、家でワープロを使って夜な夜な記事広告を書いていたのはよく覚えています。広告業自体は身近でしたね。
笹平:必然的に今の仕事にたどり着いたのですね。なぜ最初の就職先にロイター通信を選ばれたのか気になります。
海老名:大学時代に日系の大手企業で2か月程度インターンをしていました。今考えると大変貴重な経験をさせていただいていたと思いますが、大学生の私には、大手日系企業は組織が大きい分動きが鈍く、遅いなと感じていたのです。また当時は、外資やベンチャーのブームもありそれでロイター通信に決めました。
笹平:私自身とも、とても相通ずるところがありますね。就職氷河期の中でコンサルブームもあり、私は商社とコンサルで迷っていました。最終的には海老名さんとも似た理由でコンサルを選びましたね。

「やる前からできないと言わない」を
モットーに4畳半のオフィスから拡大
笹平:会社立ち上げの2013年は、Webマーケティングが世界的に盛り上がっているタイミングでもありましたよね。どうやって仲間集めをしていったのでしょうか?
海老名:最初は実家の4畳半からスタートし、シェアオフィスに半年ほど入居したのち、デザイナーの友人を誘って一緒に渋谷にオフィスを借りました。ちょうどその頃、学生インターンを募集して仲間集めを始めました。実は、今一緒に働いている松山もインターンから入社してくれたメンバーで、もう10年目になります。
笹平:スタッフも増えていく中で、当時は具体的にどんな仕事をしていたのでしょうか?
海老名:最初の頃は、SEOやGoogle Analyticsのレポートをまとめたり、サイト制作、記事のライティングなどをやっていました。
笹平:SEOもやられていたのですね、それは知りませんでした。今ではHPにもあるように様々なことを手掛けている印象ですが、どのように価値を高めていったのでしょうか?
海老名:社員のスキルが上がり、協力会社様が増えることでここまで領域を広げてこられたと思います。仕事をしていると、ありがたいことにお客様から「これはできないの?」と言われることも多くて。自分のポリシーとして「やる前からできないと言わない。」という子供の頃からの母の教えを大切にしているので、お客様にも笑顔で「できます!」と言ってから、どうやるかを考えていました。
笹平:素晴らしい教育ですね。そんな中でも、これはやってしまった!という失敗談はありますか?
海老名:もちろんあります。とある企業様の広告を運用していた案件で、当時はまだ経験も浅く、うまくハンドリングできずにいるとお客様からもご指摘をいただいてしまいました。その時、お客様に寄り添わず自分のやり方を押し付けてしまったんですね。商品や企業の理解をさらに深めていれば、もっと伸びていたかもしれないですし機会損失を招いてしまったなと反省しています。
笹平:そういった経験が、ご自身のスタンスの変化にも繋がっていったのでしょうか?
海老名:そうですね。昔の反省を活かして、今はマーケティングのプロとしてお客様に寄り添いながら、事業を本気で伸ばし、真価を最大化することを目指しています。

日辰広告が目指すのはお客様の価値を
最大限に発揮するマーケティング
笹平:では、今の海老名さんが考える日辰広告の価値を改めて教えていただけますか?
海老名:「お客様の価値を最大限に発揮するマーケティング」を掲げ、常にお客様ファーストであることです。私たちはお客様のパートナーとして、一緒に歩むことを大事にしています。笹平さんの会社はどんなことを大切にされているのでしょうか?
笹平:セレンコーポレーションでは「複雑なものをシンプルにすること」「共感できるストーリーを語ること」「創造性を高めるコラボレーションを起こすこと」の3つを価値としています。自分たちの働き方と、お客様に感じていただいている価値を言語化しまとめたのがこの3つです。日辰広告ではお客様のお困り事というと、どんな問題を抱えていることが多いのでしょうか?
海老名:デジタルマーケティングに色々な課題を抱えていて、それらを包括的に一緒に解決できるパートナーを探しているお客様が多いです。広告を出したいだけであれば、効率よく回せる企業は他にもたくさんありますし、我々でなくても良いと思っています。課題を整理するところから始め、マーケティングの専門知識と照らし合わせながら1つ1つ解決していくことが価値だと考えているので、ときには利益が減っても純広告をおすすめしますし、SEOもアドバイスします。決して広告を出すことだけが仕事ではありません。

デジタルの世界だからこそ
言葉遣いや気遣いなどリアルを大切に
笹平:日辰広告らしいプロジェクトの例はございますか?
海老名:あるお客様のケースですが、最初は運用型広告を担当していました。成績が上がってきたタイミングで、さらなるご提案をさせていただいたところ、YouTuberとのタイアップや、CRMでお客様へのアプローチをするような施策までご一緒する形になりました。今では、広告以外でもデジタル周りのお困り事は弊社にご相談いただけるようになり、とても嬉しかったですね。
笹平:そういったお客様が価値を感じる瞬間を考えてみると、成果もさることながら、実際にはもっと人間味が感じられる部分も重要なのかなと感じています。いつも海老名さんとお話するときは明るく丁寧な印象がありますが、「お客様に寄り添う」を実現するうえで、言葉遣いや距離感、所作などで大事にされていることはありますか?
海老名:この業界はいかにも論理的でスマートに物事が進んでいきそうですが、それだけで仕事が決まるわけではなく、まさにリアルな部分の小さな積み重ねが大切だと感じます。リモートで全ての仕事が完結する企業も多いようですが、逆に弊社では良い意味でベタベタとしたリアル感を大事にしています。それは向き合っているお客様にも伝わると思いますし、細かい気遣いやさりげない一言などにも気をつけています。
笹平:デジタルなことをやる中でも、アナログの人間的なところを大切にされているのですね。私もコンサルで20代の頃から50〜60代の経営者を相手に仕事をしていて、細かい所作を見られているなと感じていたのでとても共感します。

課題に合わせてチームを作り
協力会社も含めてワンチームで取り組む
笹平:仕事の進め方としては、自社のみでなく、協力会社様と一緒に進めるものも多いでしょうか?
海老名:どちらのパターンもあります。いずれにせよ、まずは課題を整理して、最適だと思えるメンバーや会社に声をかけて進行しています。広告やクリエイティブの領域であれば弊社で行いますし、それ以外であれば他の会社も巻き込んで行います。それらのチームを正しくディレクションすることが私たちの役割です。協力会社様には、お客様先へ同行してもらうことも多いです。
笹平:関わる企業が増える中で、チームワークを最大化するために意識されていることはありますか。
海老名:笹平さんから弊社へ協力会社としてお声がけをいただいた案件もありましたが、とても大切に扱ってくださった経験が記憶に残っています。私が声をかける時も、チームは全員身内だと思って接していますし、ひいてはそのスタンスがお客様にも還元されると思います。協力会社様を絶対に駒として扱わないですし、私たちが儲かればその分還元する、ということにはとても気をつけています。
笹平:弊社は規模が小さいので自社だけで仕事が完結しないことも多く、自然と「お願いします」という気持ちになりますよね。そういった姿勢はチーム全体の価値としてお客様に伝わると思います。

お客様の成功のために
愛を持って接する人と働きたい
笹平:人材の入れ替わりが激しい業界ではありますが、こんな人に頑張って欲しい、こんな人と一緒に働きたい、という人物像はございますか?
海老名:会社の目標は、「お客様のデジタル領域のブレーンとなること」なので、一緒に働くメンバーにはお客様の事業を理解し、愛してほしいです。それは、時には異議を唱えてでも、お客様の成功のために愛を持って接するということです。単に時間をお金に変えたいという方は、働く上での価値観は合わないかもしれません。
笹平:人間に等しく流れているのは時間なので、時間を価値に変えることが仕事という側面はもちろんあると思います。一方で私が若いときから意識していたのは、同じ時間しかないのならば、自分にしか出せない価値はなんだろうということでした。同じ領域でもっと早い人や深い人はいると思っていて、一期一会でこの機会をいただいたなら、自分にしか言えないこと、できないことをやろうと考えました。ただ、それを社員に求めるのは求め過ぎな場合もあると感じていて、バランスに悩むこともあります。海老名さんのお考えをぜひお伺いしたいです。
海老名:熱量と効率化のバランスはとても難しいですよね。全員が自分と同じ熱量を持っているとは限らないので、良い意味であまり期待しすぎていません。上に行きたい、頑張りたい人には、どんどん仕事を任せてこちらも熱量高く向き合うなど、相手に合わせて柔軟に変えるようにしています。
笹平:私も同じく相手の意志を確認するようにしています。永遠のテーマではあると思うのですが、経営者のスタンスが色濃くにじみ出る部分でもあるのかなと思いました。

AI時代には、お客様とデジタルの間で
言葉に出来ない部分を担う価値がある
笹平:個人的に関心の高いAIのことも聞いてみたいと思います。AIの登場によって、この先仕事がなくなるとも言われていて、事実SEOなどはAIに取って代わられている部分も多いと思います。海老名さんから見て、AIは敵であるか味方であるか、一体どんな存在でしょうか。
海老名:敵でも味方でもなく、使い側のリテラシーの問題かなと思います。デジタルマーケティングの領域では、短期的な部分では運用型広告のAI化が進んでいます。プラットフォーム側のやりたいことは、広告代理店や運用会社を挟まずに、例えば100万円あれば、それでAIが勝手にCV最適化をできるようにしたいのだと思います。一部のクリエイティブは自動生成できるようにもなりました。ですが、適応される範囲は完璧ではありません。私たちの介在価値は、広告のことをよく理解しているということと、お客様の事業の価値をよく理解するということ、またその間にある言葉では顕在化されていない部分を中間に立ってディレクションしていくことだと考えています。制作や運用管理の一面ではAIに手助けしてもらうこともありますし、うまく使いこなせる人材・会社が生き残り、ますます価値が高まっていくと考えています。
笹平:今はまだAIのプロンプトを書くこと自体が難しいという現状もありますが、そのうちこのハードルも超えそうだなと思います。より一層、活用の幅やアイデアが求められていきそうですね。

仕事にプライドを持ちながら
一緒に働くメンバーと喜びを共有したい
笹平:最後に、日辰広告のこれからの夢はありますか?
海老名:昔は上場したいという野心もありましたが、会社をやってきて改めて感じているのは、「上場したからといって身の回りが幸せになるわけではないな」ということです。人生の時間において仕事は大きな割合を占めるので、一緒に働くプロジェクトのメンバーと、シンプルに一緒に楽しみ、喜び、幸せを分かち合いたいです。お金を稼ぐことも大切ですが、一番はプライドを持って仕事に取り組むことが楽しいと考えています。
笹平:やりがいの輪を広げていく、ということですね。
海老名:そうですね。一緒に働くことを楽しめるメンバーとこの先も進んでいきたいですね。
笹平:会社の規模よりも、いかにやりがいのある仕事を生み出せるかが大事ですよね。私は前の年より仕事が楽しかったか、チャレンジできたかを考えていて、人がやらないことをやってみるとゾクゾクします。
海老名:前年よりも楽しかったか、という評価はとても良いですね。売上ももちろんですが、幸福度を指標にできたら面白そうですね。
笹平:ぜひ指標を作って、新しい価値としてクライアント様にも提供いただきたいです!
海老名:頑張ってみます!今日はありがとうございました。
笹平:ありがとうございました。

PROFILE

代表取締役社長 笹平 謙介 氏
経営やマーケティング戦略の立案などのコンサルティングサービスから、イベント・映像・WEB・翻訳などの制作まで多岐にわたる業務を行う。現在は次世代の育成にも精力的に取り組んでいる。

代表取締役社長 海老名 康
メディア、人材、マーケティング業界を営業として経験した後、2013年に日辰広告を立ち上げ。デジタルマーケティング領域でのお客様のパートナーとなることをモットーに大小さまざまなプロジェクトに携わる。